「たとえばこんな ツトム」  いつだって、楽しい事には終わりがあるし 終わりがあるから楽しいんだって思ってきた。  でも、一つの終わりはまた一つの始まりであり 僕達の戦いはまだ始まったばかりなのだと  最近何となく解ってきた気がする。  アレはまだ中二の夏休み前の事だった。              ∽  授業が終わってこの裏山に来るのは帰宅部の僕が一番早いはずなのに 今日は先客が来て窓を開けていたいた。 「よぅ、ツトム。」 「その言い方、ネコベさんに似てきましたね。」  ゲッとした顔をして見ているコウを横目に、カバンを机の上に置く。  ここは僕らのGF基地、ある人の好意によって開放された裏山のバンガロー。 「君がこんな時間にいるなんて珍しいじゃないですか。」  机の上のパソコンには町の地図が載ってる、すべてはオールグリーン。 「たまにはいいだろ?」  コウはそういってまだ脱いだばかりの学生服からガチャボックスを取り出している。  「雪でも降らなきゃいいんだけど。」 「あ、それさっき学校でうさぎにも言われた。」  お返しとばかりにニヤリと笑うコウに思いっきり嫌な顔をして見せる。 「…あれと同じだなんて、ショックだ〜。」 「奇遇だなぁ、さっき俺もそう思った。で『あれ』は?」 「追試、『ちょっと数学がやばいのよ!!』ってすがりつかれた。 さっきまでヤマまで考えてみっちり教えてたんです! そうじゃなきゃこんなに遅れません。」 「うわー…、マジお疲れ様。」 「まったくです。」 大げさに嘆いてくれるコウ、わざとらしいが確かに疲れた。 僕はいつもの席について自分のパソコンのログを取り始めると、キャタピラの音が近づいてくる。 「おかえり、ツトム。」  ナオあたりに煎れて貰ったのだろう、 冷たそうな麦茶の入ったコップを2つ入れた、小さな貨車を引いてレオパルドが音を立てて机の上をはしってくる。そういえばエレベーターの音が聞こえたっけ。 机の横のエレベーター、ドアや窓には小さな入り口、ここはそんなものが当たり前につけられている。机の上にだってさらに小さなデスクがあり、Gレッドがちょこんと座っている。 手を振っているカレに目で挨拶していつもの自分の席に座る。 「ありがとう、ただいまレオパルド。」  いつもの如く、何も言わずに連結を切ると バソコンの横についている彼の定位置であるカップホルダーに収まると ボウン、とひとつ煙をだして止まった。  「じゃ、ちょっと行ってくる。」  もう一つあるコップを一気に飲み干しながらコウは出て行った。  たぶんパトロールだろう、ついでに学校に行ってうさぎをからかってくるのが目的かも知れないが。とりあえず、僕は、町の管理システムのログ読みに専念する事にした。  あの3年前の一連の事件の後、僕達はそれぞれ何事も無かったかのように元の生活に戻った。 そう、少しのドタバタはあったもののボーグ達は彼らの星を再興する為に出て行ったはずだった。 僕達はそのとき、大切なパートナー達との思い出と祭りの後の静けさを感じながら このまま何事も無く、地球の行く末など考えなくてもいいはずだった。  今回の戦いだって、公式発表としては太陽のフレア(実際はもちろんデスブレン破壊の時の閃光)が原因と思われる謎の電波(これもデスブレンの妨害電波のことらしい)による集団幻覚という事になっている。  実際流れ弾で壊したビルだってもとどうりに「生えてきている」訳だし あながち間違いとも言えないのかもしれない。 僕たちだって彼らが居なければその嘘も信じてたかもしれない。  しばらくしてドアが開いた、セミの音が煩い。 「こんにちはツトム、相変わらず早いね。」 そうやって入ってきたのはオロチ、いやリン。 今日は暑いのか、長い髪をポニテにしている。  肩には既にこぼれんばかりのデスボーグ達が超絶なバランスの元に山積になって乗っかってる。 全てのデスボーグ達にはリボンがくくりつけられているのは味方である証拠だ。 「どう?」  リンさんはさっきコウの座ってたイスに座ってこっちのパソコンを覗いて来る。  パソコンの中に流れるログには青と緑の文字しか見えない。 「別に、これといってないみたいだけど。」 「そう。あ、こらっ。」  構って欲しいのか、デスボーグ達はカバンのキーホルダーを取ろうとしている。  こらっ、と言いながらリンはそいつを軽く指ではじく。 くるっと一回転して机にへたり込んだそいつを見て、ボーグ達は笑っていた。  みんなと別れ、新たなる星に旅立ったはずのガチャボーグ達。  一部のボーグ達が地球を離れず 守護の任として誰にも知られずに居残った事が皆にばれたのは本当にひょんな事だった。  僕達がやっとの思いでパートナーの無い生活に慣れた頃、 さも当たり前のように胸ポケットにヴラドを突っ込んで公園に遊びにきたあのクソヘタレロリpedofir…… コホン、ネコベのさもあたりまえといったあの間の抜けた顔は未だに忘れられない。  もちろんその場でコウやうさぎ、カケルやマナたちの総吊るし上げにあった上、裏山までひきづりまわされた挙句、コウと真Gレッドとのケンカの流れ弾で蜂の巣になった事はざまあみろとしか思えない。  が、この両者の意図しないセカンドコンタクトはこの後の僕達のつまらなくも平和な生活を一変させた。  あの時のGレッドの話はなかなかに興味深い話だった。 デスブレンがエナジーを採取しようとした場所は地球だけではないと言う事 つまり、戦闘可能なフォートレスボーグを初めとするデスフォース達が 採取した充分なエナジーをもってデスブレンのいた地球に帰ってくる可能性があると言う事。 そして、第一波が近づいているかも知れないという事。  つまり、またあの戦いの日々が戻ってくるということだった。  部屋の隅、地下からのエレベーターが開いて、コズミックドラゴンがわしわしと出てくる。 とてとてと不器用に走ってくる竜の勢いに驚いたのか、リンの周りにいたデスボーグ達がわらわらと逃げ始めた。  リンがドラゴンの頭を撫でると、そいつはネコのように喉を鳴らして喜んでいる。 あんな姿でも、こうやって見ると可愛く見えるから不思議だ。    一通りログも見終わり、やっと麦茶に手をつける。 冷たくて美味しい。 「どう?」 「ん、今のところ問題なし。」 「他の人は?」 「うさぎは学校で追試、コウはたぶんパトロール、後は知らない。」 「…ふーん。」 「縞野模型店、行かないの?」  コタローの家は親父さんとお姉さんが結構凄いモデラーらしく、なかなか繁盛してるらしい。 ネコベは何故かそこでバイトしている。 「行くとコタローのお姉さんが怖い顔するから。」  まぁ、あそこのねえさんキツネといいライバルだしなぁ。  昔からどっちがネコベーと遊ぶか、よく二人でケンカしていた。 今もよく、どっちが組んで対戦するかをもめてるらしいが 最近は二人がケンカしている間にちゃっかりリンが組んでいる事が多い。  あんな可愛い顔して侮りがたい。  しかも勝率はなかなかのものらしいし、まったく女って怖い。  「そう言えば試行テスト、うまく行ったんだって?」 「うん、あれ見たらNASDAは泣くね。衛星軌道まで問題なく行けた。後は耐用試験と皆の習熟。 多段ジャンプ系のボーグは連れて行けないからその選定も難しいし。」  後、タマの虫歯治療と食糧、排泄の施設と風呂その他循環設備。 それから…  「えと、私もちょっとパトロールして来るね。」 まだ4割程度しか話さないうちに、天上にぶら下がっていたデスウィングとダークナイトを呼ぶと そそくさと出て行った。          ∽  あれからさらに1ヶ月、そして僕達は今ココにいる。  巨大化したボーグをある程度固定化する技術を確立した僕達は 初めてアクティブに行動する事になった。  攻撃部隊隊長、コウをはじめとしてカケル、マナ、うさぎ、コタロー、タマはデスアークνにのって木星宙域に停滞している円盤部隊と思われるDFを迎撃、撃退する。  地球防衛部隊隊長としてネコベーが、副隊長にキツネ、リン、そして僕ツトムが 夏休み中このバンガローに常駐する事となった。  ユージ、ショウは音信不通、メットとコウジは相変わらず二人で勝手にやってるし まったく前途多難といった所だ。  でもつまらない日常とは違う、 レオパルドと初めて会った時に感じたあの感覚、 ドキドキするような、ワクワクするようなこの気持ちは たぶんなにものにも替え難い、アツイ夏休みを僕たちに与えてくれるのだと 僕は信じて疑わないのだ。 -------------------------------Continue--------------------------------  てな訳で、みんな中学生です。 ネコベーだけ高校生かな? という事で、たとえばこんなガチャ2期待の妄想でした。