B:デーモンウイング 「ヨロコブガイイ、オマエハ偉大ナル邪神ノ子ヲ受胎シタ」 この日初めて、わたしはお姉ちゃんの言い付けを 無視したことを後悔しました。行ってはいけないと 禁じられていた場所に、わたしは興味本位で 行ってしまったのです。そこはわたし達とは 正反対の存在、邪悪なデビルボーグの巣窟でした。 空を飛べるんだから何かあってもすぐ逃げられる、 そう考えていたのが愚かでした。相手にも空を 飛べるものがいたのです。わたしの前にその「顔の無い悪魔」は すばやく近づき、手に持っていた大鎌を振り下ろしました。 それをまともに食らうのは何とか免れた…というより 悪魔はわざと直接当てなかったようでした。 その弾みでわたしは手に持っていた銀の「時の杖」を 落としてしまったのです。得物を持たないワルキューレは 全くの無力といってもいいです。唯一の抵抗手段を 無くしたわたしは取り押さえられ、悪魔の仲間の所へ 連れて行かれました。 そこにはその悪魔と同じような、 不気味な姿をした連中が沢山いました。リーダー格らしき髑髏が言いました。 「久シブリノ客ダ、シカモ天使トハナ。サッソク儀式に使ウトシヨウ。」 わたしは祭壇の様な所に括り付けられました。 「デハ、ワレラノ神ニ種付ケヲシテモラオウ」 髑髏の怪物はそういうとわたしに聞き取れない言語で 呪文のようなものを唱え始めました。「………!」 中央の魔方陣のような紋様から、得体の知れない、 グロテスクな汚塊のような生き物が現れました。 「それ」は明らかな意思と、実体を持ち、わたしに覆いかぶさりました。 そしてわたしの体を犯し始めたのです。大股開きの状態で わたしの腰を飲み込んだまま、「それ」はわたしの中で 熱く蠢き続けました。その快感は奥の奥まで届き、 わたしは何度も気が狂いそうになりました。 そして、「それ」は遂にわたしの中におびただしい量の 子種を解き放ちました。その絶頂は丸3日も続き、 あまりの快感にわたしは気を失ってしまいました。 目を覚ますと、牢屋の様な所に繋がれていました。 お腹は3日も続いた射精で妊婦のように大きくなっていました。 髑髏がやってきてわたしにとどめの一言を言い放ちました。 「ヨロコブガイイ、オマエハ偉大ナル邪神ノ子ヲ受胎シタ」 その一言は、わたしを絶望の淵に突き落とすのに十分すぎる威力がありました。 (あの…あの化け物の子供を…) 髑髏が悠々と去っていく後ろで、わたしは啜り泣いていました。 数ヵ月後、わたしはあの化け物の子供を産み落としました。 角も羽も生えていませんでしたが、それは明らかにわたしの前に 最初に現れた「顔の無い悪魔」でした。デビルボーグ達は、 こうやって数を増やしていたのです。その数日後、再び 「儀式」を終えて子を孕んだわたしに、最も聞きたくなかったことが聞かされました。 …金色の杖を持ったワルキューレが捕らえられたそうです。